分析化学
Print ISSN : 0525-1931
昇温効果を利用したベンザルコニウムの選択的抽出分光光度定量
酒井 忠雄石田 典子
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1978 年 27 巻 7 号 p. 410-414

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抄録

一塩基酸色素テトラブロムフェノールフタレインエチルエステル(TBPE)はオニウム系医薬品の抽出分光光度定量には至適pH領域が広く,感度も優れているが,4級アンモニウム塩とアミン類は微量でさえ相互妨害を与える.この点を補う方法として2, 6-ジクロロフェノールインドフェノール法やピクリン酸法が検討されたが感度的に劣る.そこでTBPEを用い,相互妨害を抑制する方法を検討したところ,TBPE-R3N系においてのみサーモクロミズムがあることが分かり,この現象を利用して妨害抑制を試みた.つまり吸光度を測定する際,セル内の温度を約60℃に昇温するとTBPE-R3Nの赤色の呈色種のみ減少がみられ,一方TBPE-R4Nの青色の呈色種の吸光度にはほとんど減少がみられないことから,測定時における昇温効果を利用することにより,4級アンモニウム塩に対するアミン類の妨害はかなり抑制され,しかも感度よくベンザルコニウムを定量でき,実用性も高いと思われる.ベンザルコニウムの濃度が5×10-7M~2.5×10-6M (0.177mg/1~0.885mg/l)の範囲で直線関係が得られ,60℃におけるモル吸光係数は7.3×104 mol-1cm-11であった.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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