分析化学
Print ISSN : 0525-1931
X線光電子スペクトル法による銅-ニッケル及びパラジウム-銀合金の表面組成分析における問題点
工藤 正博二瓶 好正町山 徹古谷 圭一鎌田 仁
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1977 年 26 巻 3 号 p. 173-178

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抄録

X線光電子スペクトル法(XPS, ESCA)を用いて,完全固溶二元合金である銅-ニッケル,パラジウム-銀合金の表面組成を検討した.室温で機械的研摩を行った試料表面組成をバルクの合金組成に対応しうるとして得られた検量線においては,バルクの組成比に対してスペクトル強度比は,直線とはならなかった.光電子の平均自由行程λの逆数が,非弾性散乱の断面積と組成との一次結合で表せると仮定し, Henkeらのモデル式を用いて曲線適合を行って得られた強度に与える因子の値には,物理的に不合理なものも含まれ,このような仮定で得られたλは,合金系に適用するには不十分な可能性がある.しかしながら得られた検量線は,加熱処理などにおける表面組成変化の評価には十分利用できることを示し,銅-ニッケル合金における加熱による表面ニッケル濃度の減少及びパラジウム-銀合金における,350℃付近での異常なパラジウムの増加などを検討した.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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