1976 年 25 巻 11 号 p. 760-763
海水中の懸濁物(SS)は一般には数ppmと少なく,11程度の試水中に含まれるSS中のカドミウムを原子吸光法で測定することは,その感度からみて一般的に不可能に近い.カーボンチューブ・アトマイザーを用いるフレームレス原子吸光法により,SS中の極微量のカドミウムを定量する方法を検討した.海水をミリポアフィルターで濾過し,フィルター上のSSをフィルターとともに酸処理して得た水溶液を直接,測定にかける場合には,溶液中の成分によるマトリックス効果が現れるため,重水素ランプを併用した検量線を用いて定量を行った.感度(1%吸収)は,重水素ランプを併用した検量線では0.2ppbであり,又,5回の繰り返し実験で求めた精度は,標準偏差パーセントで約6%であった.