分析化学
Print ISSN : 0525-1931
発けい光性色素を用いる塩基性医薬品のけい光定量
テトラブロムフルオレセインエチルエステル法
星野 正徳辻 章夫
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1972 年 21 巻 11 号 p. 1523

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抄録

スルホンフタレイン系色素を用いる第3級アミンや第4級アンモニウム塩の比色定量法が多く報告されている.
プロムチモールブルーやプロムクレゾールグリーン,プロムフェノールブルーなどのスルホンフタレイン系色素はpH依存性が大きいことが指摘されていたが,坪内はテトラブロムフェノールフタレインエチルエステル(TBPE)を用いて第4級アンモニウム塩の比色定量法を報告している.この方法は親水性基であるカルボン酸をエステル化することによって,pH依存性が小さくなっている.著者らは,さきに発けい光性のテトラブロムスルホンフルオレセイン(TBSF)を用いる塩酸アミトリプチリンなどの長い側鎖を有する第2級アミンや第3級アミンのけい光定量法を報告したが,さらに,発けい光性のテトラブロムフルオレセインエチルエステルを用いる第4級アンモニウム塩のけい光定量法を確立した.
本定量法は,神経節しゃ断剤として使われている臭化テトラエチルアンモニウムを用い種々の実験条件の検討を行ない,次の操作法を確立した.
臭化テトラエチルアンモニウム(0.5~4μg/ml)水溶液1mlを試験管にとり,これにホウ酸-炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.0)2.5mlとTBFEエタノール溶液(250μg/ml)0.2mlを加えよく混ぜたのち,1,2-ジクロルエタン5mlを加えてじゅうぶん振り混ぜる.澄明後,上層の水相を除去し,有機相4mlをとり,日立けい光分光光度計Model MPF2A型を用いて励起波長543nm,けい光波長562nmでけい光強度を測定する.測定にさきだち,TBFEエタノール標準溶液(3μg/ml)でけい光強度を0~100%に調整しておく.その検量線は直線性を示す.
本けい光定量法の共存物質の検討を行なったところ,塩酸チアミン,アスコルビン酸,アンチピリン,アミノ酸,尿素,尿酸,グルコースでは,モル比で100~200倍加えても影響はなかった.本けい光定量法は,TBPEを用いる比色定量法より感度が高く,生体共存物質の妨害も少ないことから尿や血液中の微量定量法に適用できる.

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© The Japan Society for Analytical Chemistry
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