1979 年 87 巻 1011 号 p. 558-564
分相したホウケイ酸ガラスを酸で処理したときのガラス試料の長さの変化を測定した. 著しい膨張又は収縮が観察され, これらはガラス組成, 熱処理, 酸処理条件によって影響された.
熱処理時間の短い試料は酸処理中に収縮し, 熱処理時間が増すと収縮が減少し膨張に変わり平衡値に達する. この平衡値は熱処理温度に関係なく一定であるが, これに必要な熱処理時間 (t3) はその温度が高いほど短い. このt3の対数と熱処理温度の逆数とは直線関係があり, これから求めた見掛けの活性化エネルギーは62kcal/molである.
熱処理時間の短い試料は酸処理中に割れが多いが, これはケイ酸骨格の未発達によるものと考えられる.
ガラス中のNa2O/B2O3が0.2-0.4の間では平衡値は膨張であり, 0.4以上で急激に収縮に変わり, 割れが多くなる. この比の所で4配位のホウ素が飽和するので, これ以上Na2Oが増えるとその分だけケイ酸骨格が切断され, 酸処理中に収縮が起こり割れが発生するものと推察される.
ホウケイ酸ガラスにAl2O3を添加すると酸処理中の膨張の平衡値が減少し, 添加量約3.5%で伸縮を示さないことを見いだした