2005 年 31 巻 p. 125-136
〈まちの縁側〉とは,内と外の境界のとけた,小規模多機能混在の,出会いと交流のある柔らかい居場所のことである。本研究は,市街地内に立地する既存住居・店舗・公共空間等のストック活用による〈まちの縁側〉の典型事例をすくいあげ,高齢少子社会における住宅市街地再生につながる可能性を考察した。〈まちの縁側〉づくりは,捨てられていたものが新しい状況のもとでそのあり方を求めてリフォームされるとともに,ヒト,モノ,コトの相互作用豊かな高次元空間としての「場所」の力が回復・再創造されるプロセスである。それは「作られたもの」から「作るもの」へと変容させる主体的能動的営みである。そのことにかかわる住民・専門家らは,事実的なものと感覚的なもの,自己と他者の間の柔らかい関係のおもむきに共感する「人間力」を育くむ。