住宅総合研究財団研究年報
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公共賃貸住宅団地更新計画のパラダイムシフトに関する研究
延藤 安弘横山 俊祐福田 由美子森永 良丙乾 亨山田 朋来今井 邦人今田 太一郎
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1994 年 20 巻 p. 253-266

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抄録

 近年,公共賃貸住宅団地の建替計画,事業の有り様が問われている。その最大の問いの1つは,長年の間に蓄積された居住資源の評価・継承・発展の計画である。事業主体は,その経営的立場からは居住資源解読について軽視しがちである。居住者側は,建替に伴う家賃激変等の不安解消策に集中し,居住資源を生かす計画づくリヘの提案に至り得ない状況にある。「制度・事業ありき」の立場に固執することなく,「人・生活ありき」の視点から居住資源を解読・評価する活動を重層化させ,新しい時代に即応した団地再生の意味を生成する活動を展開することがどのようにして可能であろうか。今,我々が必要としているのは,主体間の対立の構図を乗り越え,主体間の対話の相互作用のかつてない様式である。それは単なる「チームワークやコミュニケーションの伝統的な構造では到達できない,価値創造のプロセス」としての「コラボレーション」である。「コラボレーションとは,共有される創造のプロセスである」。それは1人では到達することができない主体間の知恵と力の相互のやりとりの中で生成する。 本研究は,コラボレーションにより住民側がカウンタープランをつくり,公団との間にパートナーシップ方式をひらいた武蔵野市緑町団地のケーススタディを通して,公共賃貸住宅団地更新計画のパラダイムシフトの必要性と可能性を考察している。結論的には,コラボレーションが居住者参加方式に有効であることが明らかとなった。(1)居住者間のコラボレーションは,ボランタリーなアクションによる表現活動を生み出し,住民内部に熱い討議をもたらし,公団側にも影響を及ぼす。(2)居住者グループと専門家間のコラボレーションは,居住資源を生かすプランを創造させ,公団側と現実的に交渉能力のあるカウンタープランをもたらす。(3)コラポレーションの手法により,居住者は計画プロセスに参加可能となり,公団との間にパートナーシップ方式をひらくことが可能となる。

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© 1994 一般財団法人 住総研
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