研究 技術 計画
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大型工業技術研究開発制度に見るプロジェクト・フォーメーションのルーティン
勝本 雅和
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2004 年 17 巻 1_2 号 p. 65-75

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抄録

不確実性が高く,全ての選択肢を把握することができない制約合理性の下では,意思決定主体は「ルーティン(Routine)」と呼ばれる比較的簡単なルールあるいは手順に従って意思決定を行う。またルーティンは,その意思決定主体に課された評価基準に対して適応的に変化して行く。制度(Institution)がいかに運営されたかを把握するには,形式上の分析だけではなく,このルーティンを分析することが必要となる。1966年に創設された大型工業技術研究開発制度(大プロ)は,1993年に産業科学技術研究開発制度に統合されるまでの27年間に33本のプロジェクトを立ち上げている。これらの大型の研究開発プロジェクトは不確実性が高く,その編成には一定のルーティンが形成されたものと考えられる。本稿では,この大プロのプロジェクト・フォーメーションについて,どのようなルーティンが形成され,それが適応的に変化したかについて分析を行った。その結果,大プロが実施されていた当時,実質的な評価システムが大蔵省による予算査定しか存在しなかったため,それに適応する形でのみルーティンは変化していることが明らかとなり,研究開発施策に対する評価制度の重要性が浮き彫りとなった。

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2004 研究イノベーション学会
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