フォーラム現代社会学
Online ISSN : 2423-9518
Print ISSN : 1347-4057
学術誌のエートスとシステム―ソシオロジ200号刊行を記念して―
『The Sociological Review』のエートスとシステム
高橋 薫
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 21 巻 p. 116-125

詳細
抄録

本稿は英国の社会学系学術誌『The Sociological Review』の理念及び運営形態の概要について、筆者が編集事務の立場・経験から得た知見を共有し、学術誌編集及び査読プロセスの可視化を図ることを目的とする。『The Sociological Review』は1908年に刊行された英国で最も古い歴史を持つ社会学系学術誌のひとつである。本稿ではまずその沿革・組織形態及びジャーナルの概要を紹介し、理念を実現させるための工夫がいかに運営システムに反映されているかを明らかにする。次に『The Sociological Review』が掲げる二つの編集戦略(EDI:Equality, Diversity & Inclusionと国際化)をとりあげ、国際学術誌として包摂的な学術コミュニティの形成を目指すその現在進行形の取り組みを紹介する。後半では筆者が査読・編集プロセスの現場で得た気づきから、学術界を取り巻く課題についての私的な所感を共有する。『The Sociological Review』の活動を通して筆者が学ぶことは、学問の役割を広義で常に問い続ける視野の広さと、社会の変化を読みとり改革を続ける柔軟な姿勢の重要性である。本稿が学術誌及び研究者個人が論文投稿・出版の先の社会に対して担う責務や可能性についての議論を展開する機会となることを期待したい。

著者関連情報
© 2022 関西社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top