現代社会において、呼吸と心身の相互関係に気づき、呼吸法を通じてストレスを解消する人々や、乱れなく穏やかな心身の状態を追求する人々は増えているようである。ただし、呼吸についての科学的研究に目を向けると、ストレスが呼吸の乱れを引き起こすその背景や、呼吸法が心身を安定させていく学習のメカニズムについて、原理的な考察を加えた研究はほとんどない。本論文では、呼吸器疾患である「喘息」、特に心身相関である心因性の喘息を取り上げ、フロイトのヒステリー理論や、心身症の神経科学的なメカニズムを参照し、心因性の喘息を発症する過程に潜む学習メカニズムを整理し、望ましく穏やかな呼吸を訓練・学習することの意義を考察する。