人間・環境学会誌
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Print ISSN : 1341-500X
生態系サービスの概念を用いた都市住民の環境に対する意識測定
佐野 晃一伊藤 元己
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ジャーナル オープンアクセス

2014 年 17 巻 1 号 p. 1-10

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抄録

都市生態系は現代の人間生活に密接に関連する機構であり、相互に影響を与えている。人々は都市の自然環境、公共の公園や街路樹また自宅の庭等を費用を掛ける事によって管理し、都市環境や住環境を維持している。生態系サービスとは人間と自然の関係や、様々な自然からの恩恵をサービスとして表す事によって自然の価値を適切に示す事を目的として提唱された概念である。本研究ではこの生態系サービスの概念を用いた調査を通じて、都市の自然に対する人間の価値意識を明らかにする事を目的とする。調査は東京都心の行政区において住民を対象としてアンケート調査を実施し、回答をコンジョイント分析にかけた(n=510)。調査の結果、都市の生態系サービスとして、緑地や景観の美しさ、浄化機能等の都市部において重要と考えられる要素に対して高い評価を得られた。一方で地球温暖化対策や観光地としての役割等の項目に対しては評価が低かった。加えて、アンケート調査によって、都市の自然は管理しなければならないものであり、人間に不都合な自然の要素は都市環境から排除される、という都市住民が持つ意識も明らかになった。これらの結果から、都市環境の自然管理は人間にとって価値のある形を目指して行うべきであると考えられる。この研究を通して生態系サービスの概念を導入した調査法を用いて住民の環境に対する意識を明らかにする事により、都市環境政策に役立てる手法を提案したい。

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© 2014 人間・環境学会
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