犯罪心理学研究
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女性精神疾患者におけるサイコセラピー その1 無言症を呈した外人子殺し受刑者の一治験例
石原 慶子由比 貞勝
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1981 年 18 巻 1.2 号 p. 19-24

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抄録

1.外国人女性の治療にあたり,行動療法的考え方を取り入れた結果,非常に効果が認められ,言語的ハンディキャップを克服し,サイコセラピーの可能性を立証した。

2.多彩な症状を示す拘禁反応は,複雑な問題をかかえており,不安感が強いなど,特殊な個人的要因を有しているものと思われる。

3.女性の精神疾患者においてはその輿奮反応は特に月経直前に著明に現われる。

4.女性の場合,拘禁反応の治療にあたっては,薬物療法よりサイコセラピーに有用性を認める。

5.心因性無言症はその発声過程に,心理機制の変化が理解できる。故に細かい観察によって患者の心理を了解する必要がある。

6.治療にあたっては,いわゆる正の強化が効果的であるが,矯正施設では治療者間に甘やかしすぎるとの批判がでることもあり,職員の行動療法的理解への配慮が必要である。

7.女性病棟における個人療法には常に他患への配慮が必要であり,矯正施設では特にこの感が強い。

8.治療上,家族とのかゝわりは非常に重要で,いわゆる家族ぐるみの治療が効果的である。

9.適切な早期治療によって,症状の固着化,パターン化を防ぐことができる。

(本論文の一部は第27回矯正医学会総会において発表した。なお,本例は精神生理的側面からSkin potential activityによるorienting reflex の habituationを観察してSPAによるBiofeed backを行ったが,これについては稿を改める。)

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© 1981 日本犯罪心理学会
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