日本地域看護学会誌
Online ISSN : 2432-0803
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男性介護者が抱く排泄ケアへの抵抗感と排泄ケアの実施を受け入れる思い
市森 明恵大下 真以子北島 麻美西川 瑠美橋本 文福村 有夏南 貴子山越 紫横川 紀美子織田 初江佐伯 和子
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2004 年 6 巻 2 号 p. 28-37

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抄録

家族規模の縮小や女性の社会進出等の社会環境の変化により,男性が介護に携わる機会も増えている.男性にとって,受け入れ難い介護行為のひとつに排泄ケアがある.男性介護者が,在宅で排泄ケアを行っていく支援の一助とするため,男性介護者が排泄ケアに対してどのような抵抗感を抱き,排泄ケアを実施しているのかを明らかにした.研究方法は,グラウンデッド・セオリー法に基づき,排泄ケアを行っている男性介護者11名に対し,半構成面接を行い質的に分析した.その結果,男性介護者が抱く抵抗感には【排泄物に関連する抵抗感】,【固定観念に関連する抵抗感】,【要介護者との関係性に関連する抵抗感】,【排泄ケア行為自体に関連する抵抗感】の4つがあった.男性介護者に顕著なものは【固定観念に関連する抵抗感】の中の<女性の陰部に対して「穢れ(けが)れ」のイメージがある>,<排泄ケアは地位の低い人が行うものだと思う>,<排泄ケアは女性が行うものだと思う>の3つと【要介護者との関係性に関連する抵抗感】では<女性への排泄ケアは性的にいやらしく思う>であった.これらの男性介護者に顕著にみとめられた抵抗感の背景には社会規範や社会通念から影響を受けた男尊女卑の固定観念に基づくものが大きく影響していると考えられた.また,排泄ケアの実施を受け入れる思いとして,【要介護者への愛情】,【要介護者への同情】,【排泄ケアをすることへの割り切り】,【介護への努力が報われている実感】,【介護をしている自分の生き方への誇り】の5つがあった.男性介護者は抵抗感をもちながらも排泄ケアの実施を受け入れる思いをもって排泄ケアを行っていることが明らかになった.今後の支援としては介護者に関わる専門職が,においへの対策として消臭剤の紹介や価値観の転換をはかるような健康教育を行うことにより,今回明らかになった抵抗感が少しでも軽減されるよう支援していくとともに,排泄ケアの実施を受け入れる思いを抱いていけるように介護者の努力を認め,フィードバックしていくことも必要であると考えられた.

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© 2004 一般社団法人 日本地域看護学会
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