マシジミCorbicula leana は,全国的に減少傾向にあり,生息域での有効な保全策の検討が遅れている.本研究では,淡水産のシジミ類の管理手法を見出すため,琵琶湖につながる農業水路で(1)シジミ類の個体数の変動と,(2)底質の厚さと個体数の関係を調べた.さらに,室内実験で(3)アメリカザリガニProcambarus clarkii の捕食がシジミ類の個体数に及ぼす影響を調査した.その結果,水路で のシジミ類の個体数は調査期間中に3.9 個体~34 個体/m 2 の範囲で変動し,夏期から秋期の調査時には再生産個体の増加がみられた.また,底質として砂が堆積する場所に多く生息することが分かった.室内実験では,特に底質が無い条件下で小型シジミ類の捕食圧が高まることが示され,コンクリートが露出した水路において捕食圧が高まる可能性が示唆された.以上のことから,農業水路でのシジミ類の管理には,底質の堆積に着目することが重要で,個体数の減少やその兆しがあるときには,アメリカザリガニを取り除くとともに,泥溜めの設置などの工夫をすることが望ましい.