伊豆沼・内沼研究報告
Online ISSN : 2424-2101
Print ISSN : 1881-9559
ISSN-L : 1881-9559
琵琶湖につながる農業水路における淡水シジミの生息状況と 絶滅危惧種マシジミの保全に係る水路管理手法の検討
北野 大輔鈴木 誉士中川 雅博浅香 智也
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 11 巻 p. 55-66

詳細
抄録

マシジミCorbicula leana は,全国的に減少傾向にあり,生息域での有効な保全策の検討が遅れている.本研究では,淡水産のシジミ類の管理手法を見出すため,琵琶湖につながる農業水路で(1)シジミ類の個体数の変動と,(2)底質の厚さと個体数の関係を調べた.さらに,室内実験で(3)アメリカザリガニProcambarus clarkii の捕食がシジミ類の個体数に及ぼす影響を調査した.その結果,水路で のシジミ類の個体数は調査期間中に3.9 個体~34 個体/m 2 の範囲で変動し,夏期から秋期の調査時には再生産個体の増加がみられた.また,底質として砂が堆積する場所に多く生息することが分かった.室内実験では,特に底質が無い条件下で小型シジミ類の捕食圧が高まることが示され,コンクリートが露出した水路において捕食圧が高まる可能性が示唆された.以上のことから,農業水路でのシジミ類の管理には,底質の堆積に着目することが重要で,個体数の減少やその兆しがあるときには,アメリカザリガニを取り除くとともに,泥溜めの設置などの工夫をすることが望ましい.

著者関連情報
© 2017 公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団
前の記事 次の記事
feedback
Top