時間学研究
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2020年7月の梅雨前線豪雨による福岡県大牟田市の浸水被害の特徴と土地利用の時空間的変遷
山本 晴彦松岡 光美渡邉 祐香兼光 直樹坂本 京子岩谷 潔
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2021 年 12 巻 p. 1-30

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抄録

2020 年7 月6 日から8 日にかけて梅雨前線が九州北部付近に停滞し,太平洋高気圧の周辺から暖かく湿った空気が 流れ込み,広い範囲で記録的な大雨となった。6 日の日降水量は大牟田のアメダスで388.5mm(観測史上第1 位)を観 測し,7 月6 日0 時から翌日の8 日24 時までの48 時間降水量(2 日間)は,福岡県南筑後地方,熊本県山鹿・菊池地 方,大分県日田市南部の東西40km,南北20km の帯状の範囲で,600mm 以上の地域が広がっていた。本豪雨により大牟田市では内水氾濫が発生し,死者2 人,住家被害は全壊11 棟,床上浸水1,341 戸,床下浸水713 戸の計2,054 戸に上った。特に,諏訪川下流左岸の三川地区では,三川ポンプ場の排水能力(64.4mm/時間)を超える集中豪雨に見舞われたことにより,ポンプ場が内水氾濫により浸水して排水機能が停止した。これにより,三川地区では約800 戸が最高2m 近くまで浸水し,復旧が進んでいない住宅も数多く見受けられた。浸水被害が甚大であった三川地区の汐屋町,樋口町,上屋敷町1・2 丁目付近は,戦前はレンコン畑や水田が広がる低平地であったが,1960 年代に入って埋め立て工事に伴う区画整備が急速に進み,標高が周囲より低く浸水リスクの高い地域での開発が被害の拡大を助長していた。

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