日本精神保健看護学会誌
Online ISSN : 2432-101X
Print ISSN : 0918-0621
ISSN-L : 0918-0621
精神科に勤務する看護師が患者に「脅かされた」と感じる体験
冨川 明子
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 17 巻 1 号 p. 72-81

詳細
抄録

本研究の目的は、外傷体験の中核である「脅威」に焦点を当て、精神科に勤務する看護師が、どのような「脅威」を感じる体験をしているのかを面接を通して明らかにし、その体験の様相とそれが与える影響について考察することである。精神科病棟で勤務する看護師9名に半構造化面接を実施し、質的帰納的に分析した。その結果、<攻撃の対象となる><他者への攻撃を見聞きする><患者の自殺><性的な攻撃に遭う><性的な不快行為に遭う><患者に巻き込まれる>体験を、参加者は「脅かされた体験」と捉えていた。これらは外傷体験であり、その時、参加者は孤立無援感を覚え、アイデンティティの揺らぎを体験していた。参加者の語った心理的被害体験には、心理的に傷ついた人を援助する者に起こる二次的外傷性ストレスも含まれていた。コントロール感を喪失することへの不安が、看護師の危機感を高め、患者への隔離や拘束を強化する方向に作用する可能性も示唆された。看護師のメンタルヘルス、精神科におけるケアの質の向上のためには、看護師の外傷体験についての理解と回復へ向けての対策が必要である。

著者関連情報
© 2008 一般社団法人日本精神保健看護学会
前の記事 次の記事
feedback
Top