石川県農業短期大学農業資源研究所報告
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コムギ葯培養における一段階培養法の検討
島田 多喜子前野 真司
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1989 年 1 巻 p. 8-13

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抄録

日本コムギ品種を含む6品種(系統)の葯培養において,葯培養培地で直接再分化植物体を得る一段階培養法(一次成苗法)を試み,葯培養培地で形成された胚状体を再分化培地に移植して植物体を得る従来の二段階培養法と比較した.花粉形成期(一核期中期から後期)の穂を採取し無菌的に葯を培地に置床した.一次成苗培地はC_<17>またはN_6基本培地にNAA1.0mg/l, kinetin1.5mg/l添加したものを用いた(それぞれC_<l7>-1,N_6-1とする).二段階法では胚状体形成培地としてC_<17>基本培地に2,4-D2mg/l, kinetin0.5mg/l添加したもの(C_<17>-2),再分化培地として改変LS基本培地にNAA0.5mg/l, kinetin0.5mg/l添加したものを用いた.一段階,二段階培養法とも,胚状体形成率,植物体再分化率には品種間差異があり,キタカミコムギではいずれにおいても胚状体形成率は極めて低く,農林61号では胚状体形成率は高いが植物体再分化率は低かった.一方,農林12号とOrofenは比較的高い植物体再分化率を示した.農林12号とOrofenでは,C_<17>-1培地上でおこなった一段階培養法で,置床葯当り緑色植物体再分化率は,それぞれ,1.2%,0.8%であり,C_<l7>-2培地を用いた二段階法より再分化植物体獲得率は高かった.一段階培養法は胚状体の移植をせずに約半分の労力と期間で,品種によっては二段階培養法より高い率で再分化植物が得られ,実際の育種にコムギ葯培養を利用していく上で有効な手段となるであろう.

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© 1989 石川県公立大学法人石川県立大学
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