日本土壌肥料学雑誌
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温暖地サトイモ(Colocasia esculenta)栽培において被覆緩効性肥料の利用とマルチシート素材の違いが各器官の生育と収量に与える影響
大森 誉紀
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キーワード: 塊茎, サトイモ, 葉柄, LAI, CGR
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2014 年 85 巻 1 号 p. 11-16

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抄録

サトイモを,黒マルチまたは黒色生分解マルチと被覆緩効性肥料を組み合わせたマルチ栽培と,萌芽以後は無マルチとし,基肥と追肥に化成肥料を用いる慣行栽培で生育させ,サトイモ各器官の生長の特長を明らかにし,地上部生育と収量性について考察した.1)サトイモの生育相は,生育初期に親イモと子イモの数が決定され,これらイモが肥大しつつ地上部が充実し,やや遅れて孫イモが肥大した.2)生分解マルチ区では,植穴の周囲のマルチシートが烈開することで子イモや孫イモの葉身が伸張し葉数も増加した.初期の肥効を抑えた被覆緩効性肥料を用いることで地上部最大期までにLAIを速やかに拡大することができた.そして,光合成産物を葉柄に一時的に貯蔵し高い全乾物重を得て,孫イモ肥大・地上部減少期に孫イモへ光合成産物を速やかに再転流させ,生育期間を通じて高いCGRを維持でき,その結果増収となった.3)黒マルチ区では子イモ葉柄が伸張できず,子イモと親イモ葉身の間で光合成産物の競合が起こり,親イモ葉身のNARが低下したことと,LAIが早くから低下したことにより,光合成産物が不足し,子イモの平均イモ重が低く低収となった.4)サトイモの収量向上には,緩効性肥料等を用いて,生育初期の土壌中無機態窒素濃度を低く抑え,生分解マルチを用いて子イモや孫イモの葉身の伸張を阻害することなく葉数を増加させてLAIの展開を早め,その後はLAIを長く維持し,高いCGRを長期間持続させることが重要である.

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© 2014 一般社団法人日本土壌肥料学会
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