我が国の代表的耕地黒ボク土1279試料について行った非晶質成分による類型区分を基に,我が国耕地黒ボク土の酸性状態と黒ボク土分類における交換酸度y_1,の意義について検討した。 1)耕地黒ボク土のpH(H_2O)は,アロフェン質黒ボク土の作土および下層土でそれぞれ平均6.0±0.6,5.9±0.7,非ァロフェン質黒ボク土の作土および下層土でそれぞれ平均5.8±0.6,5.5±0.8であった。従来未耕地において,アロフェン質黒ボク土は,弱酸的性格を示すと考えられてきたが,610試料のうち28試料は交換酸度y_1 6を越える強酸性土壌であった。これに対して,未耕地で強酸的性格を示すと考えられてきた非アロフェン質黒ボク土は,耕地化に伴う酸性矯正によって317試料のうち239試料が交換酸度y_1 6未満の弱酸性に区分された。 2)開拓地土壌概要における非アロフェン質黒ボク土の地点割合は,土壌情報システムから見た強酸性耕地黒ボク土の割合に比べて,34道府県で3〜93ポイント高い値であった。 3)農耕地土壌分類第3次改訂版に準じ,我が国の耕地黒ボク土を次表層の交換酸度y_1 5を基準に区分すると,アロフェン質黒ボク土とされる交換酸度y_1,5未満の242試料のうち,40試料が非晶質成分からは非アロフェン質黒ボク土であった。これに対して,非アロフェン質黒ボク土とされる交換酸度y_1,5以上の50試料のうち21試料がアロフェン質黒ボク土であった。非アロフェン質黒ボク土の特異的性質を考えると,耕地土壌における非アロフェン質黒ボク土の区分は,土壌分類体系の中に非晶質成分による基準を導入するのが望ましいと考えられた。