日本土壌肥料学雑誌
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茨城県牛久招集水域における有機物フローの地域別変動と農地還元利用の評価
松本 成夫袴田 共之佐藤 一良三輪 睿太郎
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1992 年 63 巻 6 号 p. 639-645

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抄録

牛久沼集水域を上・中・下流地域に分け,1980年と1985年における有機物の農地還元量と環境負荷量を求めた.また,農地還元された有機物の土壌中での分解量をモデルを用いて推定した.1)環境負荷有機物量のうち食生活廃棄物が占める割合は人口が多い下流地域で高く,都市化が進んでいることが示唆された.2)畜産廃棄物は中・下流地域で約90%が農地還元されていたが,上流地域では豚の飼育頭数が多く,1980年が59%,1985年が46%しか還元されておらず,高い環境負荷をもたらしていた.3)農作物副産物は中・下流地域で約90%が農地還元されていたが,上流地域では約75%と低かった.これは芝が広く栽培されているためであった.4)農地還元された有機物の分解により無機化される窒素量は50〜80 kg ha^<-1>と推定された.中流地域は1980年,1985年ともに高い値を示し,下流地域は低かった.上流地域は1980年で高い値を示したが,1985年に激減した.5)窒素放出源として残存する有機物中の窒素量は800〜1200 kg ha^<-1>と推定された.中流地域は1980年,1985年ともに窒素放出源が多く,下流地域は少なくなった.上流地域は1980年は多かったが,1985年は少なくなった.6)農地における窒素収支を求め,有機物還元により補給されるべき窒素量を求めた.この量に対し,分解による無機化窒素量は中流地域で多く,下流地域では下回っていた.7)環境負荷を低減するために有機物の農地還元量を増やしていく場合,化学肥料の施用量を削減すれば過剰な窒素供給量にはならないことが示唆された.

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© 1992 一般社団法人日本土壌肥料学会
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