日本土壌肥料学雑誌
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Print ISSN : 0029-0610
茶園および隣接林地の土壌水中硝酸態窒素の垂直分布
木方 展治結田 康一
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キーワード: 茶園, 林地, 土壌水, 硝酸態窒素
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1991 年 62 巻 2 号 p. 156-164

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抄録

神奈川県の酒匂川流域に存在するれき含量の高い三竹(壌質黒ボク土)および谷峨(れき質黒ボク土)の二つの茶園およびそのおのおのに隣接する二つの林地に土壌水採取装置を設置し、深さ2mおよび3mまでの土壌水を2年間経時的に採取し、硝酸態窒素濃度等を測定した。1)概観すると、調査した各深さ、調査期間を通じて両茶園の硝酸態窒素濃度(n×10 mg/l,全平均三竹茶園33.5mg/l,谷峨茶園44.4mg/l)が三竹林地(n×1mg/l,全平均5.81mg/l)より1桁、谷峨林地(n×10^<-1>mg/l,全平均0.20mg/l)よりも2桁高かった。2)三竹茶園の深さ3mまでの土壌水中に含まれる硝酸態窒素の量は、506kg/ha,谷峨茶園の深さ2mまでの土壌水中に含まれる硝酸態窒素の量は、263kg/haであり、資源として無視できない窒素が、根域下に存在することが確認された。3)三竹ヒノキ林表層で土壌水中硝酸態窒素濃度が30mg/l(9月)を越えることがあった。下層においては濃度が減少するが、それでも年間平均が深さ3mで5mg/lを越えた。一方谷峨梅園では、年間平均が深さ1m以下で0.16mg/l以下と低い値であり、硝酸態窒素の問題を考える際に、施肥していない林地でも一括して論ずることができない場合があることが示された。

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© 1991 一般社団法人日本土壌肥料学会
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