日本土壌肥料学雑誌
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細粒質強グライ土水田における施肥NH_4-Nと土壌無機化窒素の動態と堆肥3年連用との関係
山室 成一
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1986 年 57 巻 1 号 p. 23-28

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抄録

水田土壌中における堆肥3年連用が施肥NH_4-Nおよび土壌無機化窒素の固定化,脱窒,水稲吸収への転出量に与える影響について細粒質強グライ土水田で検討した結果は次のとおりであった。1)施肥NH_4-Nの固定化割合は移植期肥が分けつ盛期肥および幼穂形成期肥のそれよりかなり大きく2倍程度であった。これは連用2年目のときと異なり,堆肥多量施用により増加する傾向であった。2)施肥NH_4-Nの水稲による吸収割合は移植期肥,分けつ盛期肥,幼穂形成期肥と窒素吸収能力が大きくなるにつれて高くなっていた。これは移植期肥および分けつ盛期肥で堆肥多量施用が小さいという傾向であった。3)施肥NH_4-Nの水田土壌中での脱窒割合は移植期肥および分けつ盛期肥では堆肥多量施用区で大きかったが,幼穂形成期肥では堆肥施用の有無によっては相違がそれほどはっきりしなかった。4)土壌無機化窒素の固定化,脱窒,水稲吸収への転出総量は無堆肥区と堆肥1トン区の比較では堆肥1トン区で若干大きかった。堆肥2トンおよび3トンの多量施用区では無堆肥区よりかなり大きい値になった。移植期から分けつ盛期にかけては堆肥2トン区は無堆肥区のそれと同程度であったが,堆肥3トン区は無堆肥区のそれの半量程度であった。しかし,分けつ盛期以後堆肥2トン区は無堆肥区のそれより6割以上も多く転出しており,堆肥3トン区はそれより多かった。土壌無機化窒素の固定化総量は堆肥2トン区で大きく,次いで堆肥3トン区,堆肥1トン区,無堆肥区の順であった。無堆肥区は堆肥2トン区の6割程度であった。土壌無機化窒素の水稲吸収総量は堆肥3トン区で大きく,次いで堆肥2トン区,堆肥1トン区,無堆肥区の順であった。これを各時期別の吸収速度でみると,移植期から分けつ盛期にかけては堆肥1トン区>無堆肥区>堆肥2トン区>堆肥3トン区の順であったが,分けつ盛期以後は堆肥3トン区>堆肥2トン区>堆肥1トン区≧無堆肥区の順であった。土壌無機化窒素の脱窒総量は堆肥2トン区と堆肥3トン区で大きく,次いで堆肥1トン区,無堆肥区の順であった。無堆肥区の脱窒量は堆肥多量施用区の7割程度であった。

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© 1986 一般社団法人日本土壌肥料学会
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