2023 年 28 巻 p. 61-77
日本において、OECD生徒の学習到達度調査や全国学力・学習状況調査の結果から、児童の書く力の育成が大きな課題であることが指摘されているが、児童期の書く力の発達に関する研究は国内で不足している。そこで、本研究では、縦断調査での使用に適した日本人児童を対象とした作文課題を作成することを目的とした。説明文と物語文の2種類の作文課題を新たに作成し、小学2、3、5年生を対象とし、作文課題を実施した。また、作文の評価方法として、「6+1 Trait」ライティングシステム(Education Northwest, 2018)を参考に、日本児童を対象とした作文の質的な評価方法の開発と、終端位置、文節数、文数、漢字数を指標として、量的評価を行った。分析の結果、質的評価、量的評価の両者で学年の影響がみられ、各指標は有効にはたらいていることが示唆された。課題の種類については、質的評価では、構成、言葉の選択の項目で、説明文より物語文の得点が高く、量的評価では、漢字以外の項目で、説明文より物語文の得点が高かった。したがって、説明文課題は物語文課題よりも難易度が高かったといえる。最後に、本研究の限界点について述べ、今後の課題について議論した。