1989 年 45 巻 12 号 p. 934-941
音線法を用いつつ小壁面の散乱効果を考慮した室内音響計算法として、Fraunhoferの光反射理論から導かれる有限小板の正反射方向へのエネルギー反射率を実効的な幾何反射係数として導入した計算手法を提案する。本手法を二つの実際のホールに適用して、4種の音響物理量(C値、D値、LE、RR)の予測精度を検討した。相関係数と計算誤差による比較の結果、定量的な一致は見られなかったが、定性的にはよく一致しており幾何音響計算に散乱波を考慮する本計算手法の有効性が確認された。なお、相関係数はC値で0.87、D値で0.77、LEで0.32、RRは0.54であり、LEは位相干渉の影響を受けて、従来の音線法に比して予測精度の改善は見られなかった。