2006 年 11 巻 1 号 p. 70-78
本研究は,高齢者の終末期のケア-の取り組みの現状と課題を明らかにするため,Y県下の介護保険施設90か所に勤務する看護職者全数717名を対象にアンケート調査を行い,395名(老健149名,特養91名,療養型155名,有効回答率55.1%)の回答を得た.主な結果は以下のとおりである.看取りの体験事例数,および受け入れ可能な治療・処置は,療養型が最も多かった.また,看護職は,「傾眠状態が続く」「嚥下・経口摂取困難」および「不安定なバイタルサイン」などにより"終末期が近い"ことを察しており,特に医療職の設置比率の低い特養の看護職の実感している程度が高かった.さらに特養の看護職は,「他職種との連携調整」を強く意識していた.終末期ケアにおいては,「苦痛の緩和」が最も意識されており,今後強化し取り組みたい項目として「死別後の家族ケア」「家族の負担軽減」があげられた.これらは,ともに療養型が最も強く意識していた.看護職は,医療機関でのキャリアを有し高齢者ケアに熱意をもっていた.一方,現施設での経験年数は浅く,准看護師が半数以上を占め,看護職の絶対数が少ないことなどは終末期のケア取り組みに少なからず影響を及ぼしていると考えられる.