日本体育・スポーツ・健康学会予稿集
Online ISSN : 2436-7257
第71回(2021)
セッションID: 2O705-10-01
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スポーツ文化研究部会【課題C】口頭発表
現代に生きる薩摩の伝統的運動文化と『大久保利通日記』
*山田 理恵藤谷 雄平高波 宗人
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抄録

今日鹿児島では、「妙円寺詣り」「曽我どんの傘焼き」「赤穂義士伝輪読会」が、伝統的な三大行事に位置づけられている。たとえば、「妙円寺詣り」では、現在毎年10月の第4土・日曜日に、妙円寺詣りと行事大会、ステージ・イベントやウォークリーなどが盛大に開催され、観光化も図られている。

 これらの鹿児島三大行事について、先行研究・文献では、薩摩藩に固有の教育組織であった郷中教育からの伝統とするものと、傘焼きについては、郷中教育を受け継いだ学舎で行われるようになったのではないかとするものがみられる。また、公刊されている『大久保利通日記』における江戸末期の記述に傘焼きは登場しない(山田ほか、2020)とされることなどから、これらの行事の伝統性については、さらなる検討が必要であると考えられる。 

 そこで、本研究では、鹿児島の伝統的な運動文化である「ハマ投げ」や「妙円寺詣り」が、『大久保利通日記』の江戸時代末期の記述において、曽我物語の輪読や他の運動文化に関連する活動などとともにどのように描かれているのかを再検討することとした。

 「薩摩のハマ投げ」や「妙円寺詣り」が鹿児島の歴史を背景にどのように継承されてきたのか、それらの現代への適応過程については、これまでにも考察されてきた(山田、2003;山田・渡辺、2011;山田ほか、2020)。その一環として、同日記における江戸末期の記述を、スポーツを通じた地域開発における文化資源の有用性という観点から、今日の鹿児島に根づいている三大行事や伝統打球戯を中心に再検討することは、現代に生きる薩摩の伝統文化の特質の一側面を考察することに繋がるといえる。

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© 2021 一般社団法人日本体育・スポーツ・健康学会
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