保健医療科学
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SDGsフレームワークに基づくHealthy Ageing評価の動向
三浦 宏子
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 70 巻 3 号 p. 235-241

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抄録

現行のSDGs目標では高齢者保健に関する目標は設定されていない.しかし,エイジングは先進国だけの問題ではなく,多くの中所得国でも顕在化しつつあるグローバルな課題である.本研究ではこれまでの高齢化対策の変遷をレビューするとともに,SDGsフレームワークを踏まえたエイジング評価指標を検討した.国連等から発刊されている二次資料・データに加えて,PubMedとScopusによる文献検索を行い,エイジング概念の学術的動向を把握するとともに,国レベルのエイジングの状況を評価できるエイジング評価指標を抽出した.さらに,抽出した指標をわが国に応用した場合に算出可能かどうかについても検証を行い,課題を整理した.

WHOは既にSDGsの取り組みにおいてHealthy Ageingへの対応が必須であることを指摘している.国家レベルのHealthy Ageing指標として最も実績を有するのはActive Ageing Index(AAI)であった.このAAIをわが国で適応する場合,既存の統計資料を活用することにより,AAI算出に必要なデータはある程度収集可能である.しかし,年齢区分を55歳以上にしている項目や,Political Participation など近似するデータが存在しない指標もあり,AAI算出にあたっては追加調査や推計値の算出等が必要と考えられた.また,AAIはSDG3の指標のひとつであるUHCサービス・カバレッジ指標(SCI)のサービスアクセスに関する下位尺度スコアと有意な関連性を示した.

国家レベルでのエイジング評価にはAAIが最も実績を有しており,今後,国際的な評価を行う際にも有効なツールになりえることが示唆された.わが国での応用可能性については,既存統計・資料のみでは情報が不足している項目がいくつかあり,追加調査や推計等による代替値の提示などを検討する必要がある.

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© 2021 国立保健医療科学院
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