保健医療科学
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論文
日本人女性の産褥風疹ワクチン接種状況と接種に関わる要因についての文献レビュー
三田村 実祐白石 三恵 安井 まどか岩本 麻希島田 三惠子
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ジャーナル オープンアクセス

2017 年 66 巻 1 号 p. 47-55

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抄録

目的:近年,本邦における妊娠可能年齢女性の風疹抗体保有率の低下が問題となっている.風疹予防対策の一つとして,厚生労働省は風疹低抗体価の妊婦に対し,次回妊娠時の先天性風疹症候群発症リスク低下のため,産後早期の風疹ワクチン接種を強く推奨すると2004年に発表した.一方,産婦人科診療ガイドラインでは産褥風疹ワクチン推奨レベルはC(実施が考慮される)であるため,医療施設の対応に差があり,産褥風疹ワクチン接種状況は明らかでない.本レビューでは,風疹低抗体価である女性の産褥風疹ワクチン接種状況およびワクチン接種に関連する要因を明らかにすることを目的とした.
方法: 2004年以降に調査が実施された研究について,電子データベース(医学中央雑誌,CiNii,MEDLINE,PubMed,CINAHL)及びハンドサーチによる文献検索を行い,包括・除外基準に基づいて検討した.その後,risk of bias評価ツールを用いて論文の質評価を行い,包括する文献を決定した.
結果: 8文献を本レビューの対象とした.風疹低抗体価の妊婦の割合は14.0%−46.6%であった.風疹低抗体価の女性における産褥風疹ワクチン接種率は,医療施設がワクチン接種を推奨していた6文献では18.1-98.7%,推奨しなかった2 文献では8.0-10.2%であり,統合しχ2検定を行った結果,ワクチン接種を推奨した場合の接種率は推奨しない場合に比べ有意に高かった.また,産褥入院中にワクチン接種を推奨した4文献の接種率は20.7-68.1%,産後1か月時に推奨した2 文献では18.1-56.3%であり,統合しχ2検定を行った結果,産褥入院中に推奨した場合の接種率は,産後1ヶ月時に推奨した場合より有意に高かった.さらに, 1文献ではワクチン接種公的費用助成の導入によりワクチン接種率が有意に上昇したことが報告されていた.産褥風疹ワクチンを接種しない個人的理由には,次回妊娠希望がないこと,疾患による接種不適当,ワクチン接種対象者の把握漏れが挙げられていた.
結論:ワクチン接種推奨の有無,接種推奨時期,公的費用助成の有無が産褥風疹ワクチン接種に特に関連する要因として抽出され,ワクチン接種率向上のための効果的な取り組み(医療施設によるワクチン接種推奨,産褥入院中の接種推奨,公的費用助成の情報提供)の可能性が示唆された

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© 2017 国立保健医療科学院
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