日本保健福祉学会誌
Online ISSN : 2424-0036
Print ISSN : 1340-8194
高齢者の食事バランスに及ぼす心身の状況および在宅サービスの利用状況等の影響
延原 弘章北園 明江渡辺 由美安西 将也
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2001 年 7 巻 2 号 p. 7-18

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抄録

目的 : 高齢者の健康保持とQOLの向上に資するため、高齢者の属性や生活環境などに加えて、配食サービスなどの食生活に関連する保健福祉サービスの利用状況も含めた多様な因子が、高齢者の食事バランスに及ぼす影響について、これらの因子相互の影響を考慮した分析を行う。方法 : レセプトにより抽出された「寝たきり老人予防該当者」を対象として、国民健康保険中央会が10県75市町村で実施した「平成8年度寝たきり老人ゼロ作戦支援訪問事業」のデータから、70歳以上の10,538名について分析を行った。高齢者の食事バランスは、平成2年の国民栄養調査で用いられた栄養診断得点とそれを構成する各質問によって行った。高齢者の食事バランスに影響を及ぼす因子としては、性、年齢階級、健康状態、知的能力、家族構成、受療状況などに加えて、ホームヘルプサービス、デイサービス、デイケアおよび配食サービスの利用状況をとりあげ、多重ロジスティック回帰分析を用いた検討を行った。成績 : 性別では女の、年齢階級別では85歳以上の食事バランスがよかった。また、寝たきりの者、知的能力に異常衰退がみられる者、一人暮らしの者の食事バランスが悪く、受療している者はよかった。在宅サービスの利用状況による比較では、サービスの種類によって利用者と非利用者で特に差がないか、あるいは利用者の方が食事バランスが悪かったが、特に、ホームヘルプサービス利用者の食事バランスが悪かった。結論 : 今回取り上げたいずれの在宅サービスについても、高齢者の食生活向上についての十分な貢献が認められず、高齢者に対する適切な食事支援の必要性が感じられた。

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© 2001 日本保健福祉学会
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