岩手医科大学歯学雑誌
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原著
歯周病原細菌の歯肉上皮バリア突破能
髙橋 晋平下山 佑石河 太知佐々木 大輔木村 重信八重柏 隆
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2017 年 42 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

‘Red complex species’ をはじめとする歯周病原細菌が歯周炎患者の病巣歯肉組織内に侵入することは明らかにされているが, その詳細な侵入の分子メカニズムについては未だ不明な点が残されている. 本研究では歯周病原細菌の歯肉上皮バリア突破機構について, 細胞内を通過するtranscellularルートと, 細胞間隙を通過する paracellular ルートから検討を行った. 株化ヒト歯肉上皮細胞 (Ca9-22) を上部チャンバーに培養した double-chamber culture 法を用い, Porphyromonas gingivalis, Tannerella forsythia, Treponema denticola およびAggregatibacter actinomycetemcomitans を添加した. 歯周病原細菌の上皮バリア突破能は菌種特異的 real-time PCR 法 (q-PCR) により下部チャンバーへ通過した菌量から検討した. 歯周病原細菌による細胞間結合の破壊能については FITC-dextran の通過量から検討を行った. また, 細胞層に付着, 侵入した歯周病原細菌数についても q-PCR から検討した. その結果, P. gingivalis は, 培養6時間で transcellular, paracellular の両ルートを通じて上皮バリアを突破することが明らかとなった. また, T. forsythia, A. actinomycetemcomitans P. gingivalis 同様に上皮バリア突破能を有していることが明らかとなった. しかし, これら2菌種の上皮バリア突破経路はtranscellular ルートのみであることが示唆された. これらの結果から,複数の歯周病原細菌は歯肉上皮バリアを突破するが,その侵入経路は菌種により異なることが強く示唆された.

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2017 岩手医科大学歯学会
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