森林応用研究
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論文
北山杉林業に対する地域住民の意識の現状
髙田 弥生重原 奈津子柴田 昌三
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2021 年 30 巻 2 号 p. 1-8

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抄録

近年の少子高齢化やライフスタイルの変化などの社会や経済状況の変容により,北山杉林業の特徴であるモザイク状の森林利用景観の消失が危惧されている。本研究では,その現状に対する住民意識を把握するため,北山中川地区の住民を対象にアンケート調査を実施することで,森林への関わり方や住民意識を明らかにし,北山杉林業の保全のための対応策について検討することを目的とした。その結果,山林所有については,高度成長期の拡大造林の行きづまりと捉えている例があった。山林の管理については,新たな活用法として森林保養や環境教育の多面的機能性の利用などに関する意識が認められた。後継者世代の一部は都市部で別の職業に就きその結果,後継者の減少が進み林業への関心は低くなっていることが示された。しかし,伝統的な技術や林相は残したい,今後も住みたい,など地域への愛着は高かった。一方で,所有者の森林管理意識が下がり放置状態の森林が増加していることが明らかになった。木材需要の低迷による林業の担い手の減少など,北山杉林業は大きな分岐点に差し掛かっているが,一部の林家は林業の継続に意欲的であったことから,今後も一部では森林管理が持続する可能性が示された。

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