森林計画学会誌
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植林の推進が農業・牧畜業・林業及び農家収入に与えた変化 : 中国内蒙古自治区敖漢旗Y村を事例として
姚 彤小池 正雄李 阿拉木斯
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2006 年 40 巻 1 号 p. 65-74

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抄録

現在,中国では砂漠化が大きな問題となっている。砂漠化は農業,牧畜業の存在形態を大きく左右している。農村人口が総人口の70%を占める中国農村において,森林造成事業は農家の生存問題,環境問題を解決し,農村経済を持続的に発展させる基盤である。本稿では中国の中でも特に砂漠化問題が深刻である内蒙古自治区敖漢(オハン)旗Y村を研究対象とし,現地における植林の実態と農家の収益状況を調査して,その相互関係と問題点を明らかにした。その結果,以下の二点が明らかになった。(1)農家に刺激を与える「五荒」(荒山,荒坂,荒溝,荒浜,荒漠等の未開発利用の土地資源)政策の請負の下で実施する植林の推進により,農家の収入は4.39(439%)倍に増加した。(2)しかし一方において請負は先行投資などが必要であり,資金力を持つ農家しかできない。その結果として請負のできる農家とできない農家とに,収入格差が生まれ,農家の階層分化が進んだ。農家の多くは貧困から抜け出したがこれ以上の収入アップは考えにくい。このような状況の中において今後請負をできる農家とできない農家間において,より一層の貧富の差の拡大が予測されるという結論を得た。今後とも植林を継続・発展させていく上で,森林の造成と同時に低収入農家の増収を図る政策の改善が必要であろう。

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© 2006 森林計画学会
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