日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌
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動物の飼育環境内の資源に対する要求度の測定方法について
二宮 茂
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2008 年 44 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

近年、飼育下の動物の福祉評価に対する必要性が高まっており、その参考資料となるこれら動物の飼育環境内の資源に対する要求度測定が盛んに行われている。しかし、要求度測定には供試する動物に影響を与える外的要因(報酬や負荷の与え方)や内的要因(供試動物の要求度)に対する考慮が必要である。そこで、要求度測定の結果に影響を与えうる要因と要求度の数値を算出する方法についてまとめた。まず、負荷をかける方法にはオペラント条件付けが多用される。しかし負荷の種類によって、オペラント条作付けを行った場合の動物の学習の程度が異なる可能性があり、また、負荷のかかり方も一様でないので、要求度の測定数値にも影響を及ぼす。次に報酬の与え方として、負荷を克服した後に報酬と接触することのできる時間に考慮する必要がある。時に報酬として二次強化子を利用することもある。また、負荷と対峙する時点で報酬を示す外的刺激があるかどうかや実験環境以外で報酬を得る機会があるかどうかを考慮する必要がある。そして、要求度の算出方法には4つあり、それらは負荷と報酬獲得の数値を対数化しその関数の傾きを指標とする方法(Elasticity of demand)、その関数とX軸、Y軸、負荷(X軸)の最大値との間の領域の面積を指標とする方法(Consumer surplus)、報酬に対する負荷を動物の反応がなくなるまで増やした値(Maximum price paid)、報酬獲得回数と負荷の値を掛け合わせた値の単位時間当たりの合計値(Total expenditure)である。できればそれらを併用する方が望ましいと言われている。動物の要求度を計測する際にこれら関連事項を正確に制御することが重要であり、その場合の測定値は動物福祉の客観的な評価指標となりうる。

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© 2008 日本家畜管理学会・応用動物行動学会
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