東京都立大学大学院
1999 年 48 巻 6 号 p. 50-58
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志賀直哉の『暗夜行路』は「運命」という観念を巡って書かれた小説として読める。全体の枠組としてはメーテルリンク『智慧と運命』の、「運命」の「影」からの脱出、という図式を借り、時任謙作の意識を通して「運命」を描いた。様々な事件を通じて、謙作はその「運命」観を変えて行くが、最終的には「運命」は単なる意味付けに過ぎないものとして『暗夜行路』の世界そのものから消えて行く。これは『智慧と運命』とは異なる、意味からの解放という志賀独自の結論である。
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