1985 年 34 巻 10 号 p. 55-64
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空洞化していく伝統の秩序、その意味を今一度自覚的に問い直すことで独自の空間を開いた宣長の姿を「実情」論の中にみょうとした。「実情」といえば、一般的には個々の内的真実を先験化して考えがちだが、彼は逆に、真の「実情」は擬古主義によって発掘すべきものとみた。その結果、人間の心奥を個々の相違を超えて貫く和歌的共同体の心性に逢着する。ただこうした「実情」が、伝統の秩序に帰属したい彼の要請と不可分の関係にあったのはいうまでもない。
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