2019 年 57 巻 1 号 p. 126-136
この論文の第1の目的は,大正期の保育所における保育児名義貯金が小遣銭の節減や買い食いの減少を意図したものであり,その意義と限界を明らかにすることである。第2の目的は家庭教育を刷新する家庭支援戦略として,この歴史的経験から現代的な示唆を導くことである。研究方法として財団法人弘済会の史料を文献調査した。その結果,小遣銭と買い食いの問題に対する職員の認識,保育児名義貯金の奨励方法などが明らかになった。最後に,貯金は小遣銭の節減と買い食いの減少という二重の目的のための予防的な家庭支援プログラムであったと結論づけた。