本稿は,倉橋惣三の児童保護論から幼保一元化の考え方と幼児教育制度への関与を明らかにするものである。倉橋は,3・4 歳以上児は幼稚園・保育所に限らず文部省のもとで一元化し,等しく幼児教育が受けられることが望ましいが,3 歳未満児保育・乳児保育は衛生育児上の問題が生じるため厚生省で行われるべきという実現可能な制度を提案した。ここには,(1)子どもの尊厳を尊重するという思いからすべての子どもに等しく幼児教育が行われること,すなわち幼稚園と保育所の保育内容の同質化が望ましい,(2)保育者の職能や設備が異なるため,子どもの年齢・発達段階の観点から施設や制度を分離することが適切である,(3)幼稚園も社会の要請に応じて社会的児童保護の機能を担う必要性がある,という倉橋の幼保一元化の思想が含まれていた。