2015 年 45 巻 1 号 p. 1-12
近年盛んに行われている教育現場での音楽アウトリーチに関しては, 教職員の語りはこれまで正当に扱われてこなかった。本研究ではこのことを指摘した上で, 音楽アウトリーチを経験した保育者の語りを捉えることを目的とし, インタビュー及び修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M-GTA) による分析を実施した。分析の結果, 保育者が子供に対して獲得的な学習観を前提に接するのではなく, 活動のなかで子供になにができているかを捉えるような語りが中心であったことが明らかになり, 保育園・幼稚園が子供の有能さに着目する場となっていることが示唆された。また, ミーティングやインタビューといった場の設定によって通常は着目しない行動に対する意味づけや, 新たな観点からの語りが得られたことから, こうした場が水平的な学習を促進させる, あるいは水平的な学習を言語化し, 可視化させる場として機能していた可能性が指摘された。