バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
事象関連電位からみた競争結果の認知について
松本 清佐久間 春夫
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キーワード: ERP, P300, N400, 競争事態
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2008 年 35 巻 1 号 p. 27-32

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抄録

本研究では,競争の結果の認知の特徴を明らかにするために,反応時間課題を用いた競争課題を実施し,結果の呈示によって誘発されたERPを記録した.被験者の競争心の高さを調査し,競争課題時には相手の姿が見える場合と見えない場合とを設定した.P300は注意資源配分の指標となり,N400は意味処理を反映するとされていることから,これらの成分に対する,競争心の高さ及び競争相手の可視性の影響について検討を行った.その結果,競争時には勝つことを目標としていることを反映して勝った時にはP300が増大し,負けた時には目標と結果が不一致であることからN400が増大した.競争心の高い人のP300は競争心の低い人より減少し,その傾向は競争相手が見える場合に顕著であった.競争心の高い人は相手が見えない場合にP300が増大し,対照的に競争心の低い人のP300は競争相手の可視性に関係なく一定の振幅であった.これらことは,競争心の高い人が,結果が呈示されるのを待つだけでなく,自己と相手のパフォーマンスの比較といった他の情報を積極的に収集することによって結果を予測していることを示唆している.N400については,競争心の高い人の方が競争心の低い人よりも増大していた.このことは,競争心の高い人が低い人に比べ,自己のパフォーマンスと呈示された結果とを意味的に統合するためのフィードバック処理を,より積極的に行っていることを示唆している.以上の結果から,一般に競争状況下において,人は勝つことを目標として課題を遂行し,結果を認知した後にも次の競争に備えてフィードバック等の処理を行っていること,競争心の高い人は結果を重要視し,競争時には絶えず活発な情報処理を行っていることが示唆された.

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© 2008 日本バイオフィードバック学会
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