生命倫理
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原著論文
性機能不全における治療の安全性を考える
-境界例/普通精神病という観点から-
水野 礼
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2020 年 30 巻 1 号 p. 22-29

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抄録

 本稿では、医の安全という観点からDSM-5における女性性機能不全のうち「性器-骨盤痛・挿入障害」に対し、現在、本邦の婦人科医療で主流の治療法にみられる倫理的問題点を取り上げる。 DSM-5において当障害の診断は、一応のところ性関連以外の精神疾患や、他のストレス因などの作用が除かれてなされるものとされている。しかし現在、当障害が主として診られている婦人科医療の現場では、性関連以外の精神疾患における微細な兆候や、他のストレス因が見落とされている可能性が存在し、それがさらなる病状悪化や二次障害を招いている可能性が危惧される。 このことから、ここでは当障害を、精神分析における本来的な意味合いでの境界例/ラカン派の普通精神病 という概念からとらえなおし、性にまつわる症状を持つ人々に対し、主に用いられている〈婦人科的行動療法〉 に偏った形で治療を進めることの危険性と、より安全に治療をすすめるための対案を提起する。

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2020 日本生命倫理学会
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