生命倫理
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Medical Tourismが受入国の医療環境に及ぼす影響の論点整理
高島 響子児玉 聡
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2011 年 21 巻 1 号 p. 111-118

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抄録

昨今,日本においてMedical Tourism (以下,MT)の実施をめぐる議論が活発化している。MTがすでに広く行われている国々では,国外からの渡航患者に医療を提供することにより受入国の国民に不公平な医療環境が生じるとの懸念がある。本研究は,MTが受入国の医療環境に及ぼす影響について海外の論点を明らかにし,また日本のMTをめぐる動向を示した上で,日本の今後の検討課題を提示することを目的とした。MTが受入国の医療環境に及ばす影響について,外貨獲得を通じた国内医療の整備,国内医療者の量的・質的向上,医療の国際標準化の3つの論点があることが示され,また日本におけるMTをめぐる動向の特徴として,1)受入国として参入しようと政府を中心に準備が進んでいる,2)日本の医療における得意分野の提供を想定している,3)受入れに積極的なのは多くの地方都市であり地域活性が期待されている,が挙げられた。日本がMTの実施を進めるにあたっては,国民の受療機会の保障等に配慮した制度設計,および営利追求主義の加速による医療者-患者関係の変質の可能性が,重要な検討課題であることが明らかとなった。

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2011 日本生命倫理学会
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