生命倫理
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初期仏教のオートノミー論 : 「自己-中心」のオートノミーから「非-自己-中心」のオートノミーヘ
谷口 昌陽
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2002 年 12 巻 1 号 p. 154-160

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抄録

19世紀西洋が「自己を法とする」(autonomy)には、まず、神からの自立が必要だった。旧い「法」(神)が死に、自己が法にはなったが、如何にして自己が賢明な法となるか、は未解決のまま残された。他方、初めから神から自立し、自己をデシジョン・メーカーとする初期仏教は、自己決定メカニズムを観察・分析した結果、自己自身こそが自己決定を妨害する、と発見し、自己が自己から自立する方法、即ち、自律への道、を提示した。西欧のオートノミーは神から自立した「自己-中心」を、仏教のオートノミーは自己が自己から自立した「非-自己-中心」を奨励する。自己からの自立を問わない西欧オートノミー概念が早晩問題を生む事は明白である。実際、今日多くの批判が生まれ、その再考察が求められている。初期仏教のオートノミー論は一つの洞察を提供する。同時に、その倫理的行動原則は今後広く普遍的に適用できる可能性を持つ。

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2002 日本生命倫理学会
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