経済地理学年報
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規制緩和に伴う公共交通政策の転換 : 岐阜市のバス事業民間譲渡の事例
佐藤 正志
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2007 年 53 巻 2 号 p. 198-213

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抄録

1980年代以降日本では,公共部門の財政縮小を主要な狙いとした民間活用政策が進められてきている.こうした近年の動向を踏まえて,本稿では,2002年に行われた路線バス事業への規制緩和を取り上げて,規制緩和実施に対する自治体の対応と公共交通政策への姿勢を考察した.事例として,2003年4月から民間譲渡が段階的に行われた岐阜県岐阜市の公営バス事業を取り上げた.路線網,運行本数,運賃を指標としたバス運行状況について民間譲渡前後で考察した結果,岐阜市では大きな変化は起こっていないことが明らかになった.その一方で民間譲渡に伴って収支状況は大幅に改善されている.この理由として,路線網維持の契約や民間事業者に対する補助金制度の確立といった施策を岐阜市が行ったことが大きな意味を持っていた.加えて,岐阜市は市営バスの民間譲渡と平行してオムニバスタウン計画や路線再編計画といったバス交通の活性化策を打ち出している.こうした施策は民間譲渡を契機として,公共交通の中でも路線バスを市内交通の中心に据える岐阜市の方針の現れである.この方針の中で,岐阜市は自身を公共交通の「運営者」から市内の交通全般に対する「監督者」へと役割を転換させようとしている.

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© 2007 経済地理学会
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