凍結および乾燥研究会記録
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9.凍結乾燥痘苗の分散媒について(第2報)(D.凍結乾燥及び保存の被乾燥体に及ぼす影響について(I部))
沢田 哲治鈴木 正敏
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1962 年 5 巻 p. 68-76

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抄録

我々は組織片の混在した未処理痘苗と組織片を除去したフロールカーボン処理痘苗における分散媒の影響を比較し、昨年の研究会において保存成績の一部を報告した。今回は仔牛の粗苗から調製した前記の乾燥痘苗の保存実験を終了したので、改めてこれらの成績を一括して報告する。同時に発育鶏卵の感染漿尿膜から調製したCAM痘苗での分散媒の影響を追求中なので、その保存成績の一部も併せて報告する。1.先づ、組織片の混在した未処理痘苗における単一分散媒としてのグルタミン酸ソーダの濃度差による影響は著明でなかった。次に、保存性を高める目的で、グルタミン酸ソーダに第2の分散媒(可溶性澱粉、PVR、CMC)を加えたが、何れにもその効果は認められなかった。2.フロールカーボン処理痘苗における単一分散媒としてのグルタミン酸ソーダの影響は未処理痘苗の場合と傾向を異にし、濃度差による影響が著明で、至適濃度の存在を認めた。しかし、乳糖には分散媒としての効果を認めなかった。亦、第2の分散媒の影響にグルタミン酸ソーダの濃度を至適濃度より高くした場合、PVPとCMCにその効果が現われ、至適濃度のグルタミン酸ソーダ単独と同程度に保存性を高め得ることを確認した。3.組織片の混在した未処理のCAM痘苗で種々の単一分散媒の影響を比較した結果、グルタミン酸ソーダとペプトンが同程度に力価保持が良く、グルタミン酸ソーダの濃度差の影響は著明に現われなかった。しかし、乳糖とブドウ糖には分散媒の効果が認められなかった。フロールカーボン処理CAM痘苗においてはグルタミン酸ソーダの濃度差の影響がみられ、比較的低濃度で有効のようである。以上、未処理痘苗とフロールカーボン処理痘苗における分散媒の影響を比較した。

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© 1962 低温生物工学会
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