防腐殺菌剤を配合した医薬品および化粧品製剤の開発過程において基本処方の防黴試験による初期スクリーニングに-80°に凍結保存した真菌類の検定菌をそのまま用いることを試みた.凍結分散媒として0.05% Tween 80を加えたリン酸緩衝液(PBS),10% glycerolおよび5% dimethyl sulfoxide(DMSO)をもちい,集菌した検定菌Hansenula anomala C-1およびH-1, Candida albicans NHL 4019およびAspergillus niger NHL 5088(胞子)をそれぞれ懸濁し,凍結速度-2.0°,-1°および-5°で-40°まで凍結し,直ちに-80°デープフリーザーに保存した.これら検定菌4菌株の凍結3ケ月の生残率は凍結前の19%から100%以上を示した.一方,これらの凍結菌を融解後,そのまま接種菌とし,防腐防黴剤としてパラヒドロキシ安息香酸を配合したモデル処方のクリーム剤の防黴試験をおこなったところ,H. anomala C-1およびH-1,およびA. niger NHL 5088ではすべての凍結条件で通常の方法の培養菌の場合とほぼ同じ防黴生残率をしめした.これに反してC. albicans NHL 4019の場合PBSおよびDMSOを分散媒としたものでは凍結直後でも培養菌に比べてクリーム剤に対する抵抗性が劣っていて,凍結による障害が想定された.すなわち分散媒として10% glycerolを用いた場合,供試した4株の凍結検定菌による防黴試験では通常の培養菌による防黴試験結果と一致する数値が得られた.