本稿は,日常会話における同意がどのように「強い同意」として認識可能となるかについての考察である.本稿では,同意という行為が,さまざまな言語的・非言語的資源を組み込んだ複数のデザイン特性の総体で実現されるという点に着目し,マルチモーダル・インターアクションの枠組みから「強い同意」がどのように可視化され,認識可能となるかを考察した.データ観察のなかで明らかになったのは,同意ターンの話者は,その瞬間に利用可能なさまざまな資源(言語形式,プロソディー,身体動作など)を組み込んで同意ターンを構築し,それら複数の資源をデザイン特性として同時に利用することで,直前の話者によって開始された評価活動への強い係わり合いを表明し,「強い同意」を実現するということである.このことから,同意ターンにおいて話者は複数のデザイン特性によって指標される評価活動を行うことがあり,話者の同意の強さは,こうした評価活動への係わり合いの強さを参照することで測られるべきであることが示唆された.