日本近代文学
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論文
谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のをんな』論
――『源氏物語』の翻訳体験との交渉をめぐって――
大津 直子
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2015 年 93 巻 p. 32-45

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抄録

本稿は、『猫と庄造と二人のをんな』の執筆と、当時取り組んでいた『源氏物語』の翻訳とが、相互に影響を及ぼしあう関係であることを明らかにした。この(猫と)作品は、「若菜上・下」巻、言い換えれば『源氏物語』第二部世界に影響を受けてきたと言われてきた。だが小説の執筆と源氏訳との進捗状況を確認すると、直接の影響は「帚木」巻から受けたと推察される。なぜなら雨夜の品定めにおける左馬頭と二人の女とのエピソードが小説の筋書きに反映されていると考えられたからである。さらに単行本収録段階で本文を削除した点についても言及した。一方、國學院大學蔵『谷崎源氏新訳草稿』から、小説の執筆が第二部世界の訳出に影響を及ぼした可能性についても言及した。

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