美術教育学研究
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彫刻家佐藤忠良の教育
―彫刻家育成における専門教育の理想・言説「徒弟」,「職人」からの一考察―
齋藤 亜紀
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2023 年 55 巻 1 号 p. 129-136

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抄録

本研究の目的は彫刻家佐藤忠良の芸術教育の指導者としての面に着目し,近代から現代に至る芸術家育成の専門教育,美術科教育を再考することである。佐藤は桑澤洋子が建学した大学で新しい造形教育の指導を模索した。1972年に要職を退いた後は,佐藤の元で学んだ岩野勇三が佐藤の意図を理解し,実践し補完した。その後1980年代になると,著述や雑誌のインタビュー,対談などで,改めて大学での試みについて語りだしている。その際にロダンが語ったという「習いごとは徒弟でないと駄目,生徒は駄目」といった意味の言葉や「職人」を引き合いに出し,現在の大学のシステムやカリキュラムについての問題を語っている。それらの言葉は,佐藤の教育を理解する上で,多くの誤解と反発を生んできた。そこで本稿では佐藤が愛読したという高村光太郎が訳した『ロダンの言葉』を再読し,佐藤がこれらの言葉に込めた真意について考察した。

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© 2023 大学美術教育学会
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