動物分類学会誌
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琉球諸島における洞穴棲コウモリの条虫相
沢田 勇
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1978 年 14 巻 p. 5-9

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抄録

1.沖永良部島,沖縄本島,宮古島,石垣島および西表島の洞穴棲コウモリの条虫相を明らかにし,それらの条虫相を奄美大島以北の日本各地のそれと比較した。2.沖永良部島のユビナガコウモリMiniopterus schreibersiiは剖検した12頭中わずかに1頭に同定不能の幼弱虫体1条のみが寄生していたが,沖縄本島のオキナワコキクガシラコウモリRhinolophus cornutus pumilusには条虫の寄生は認められなかった。3.宮古島ではコウモリの生息が確認できなかった。4.石垣島および西表島のリュウキュウユビナガコウモリM. s. blepotisにはVampirolepis hidaensisが,西表島のヤエヤマコキクガシラコウモリR. c. pumilusにはV. isensisがそれぞれ寄生していた。5. V. hidaensisは西日本一帯に生息するユビナガコウモリおよびキクガシラコウモリに寄生する条虫と同一種であり,V. isensisは奄美大島以北の北海道を除く日本各地のコキクガシラコウモリに寄生する条虫と同一種である。こうしたことから八重山諸島のリュウキュウユビナガコウモリとヤエヤマコキクガシラコウモリは条虫相からみて奄美大島以北に生息するキクガシラコウモリおよびコキクガシラコウモリと何らかの関連性があると考えてよい。

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© 1978 日本動物分類学会
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