2011 年 34 巻 3 号 p. 47-54
本稿は,オーストラリアの大学の教員養成課程における教育格差解消の取り組みを,とりわけニューサウスウエールズ(NSW)州におけるそれに焦点を当てつつ論じる。より具体的には,教育における格差の問題を専門としてきた教育社会学の動向に注目することで,オーストラリアの教員養成課程における格差への対応の現状とその限界を明らかにする。最後にこのオーストラリアの事例から,多文化化と格差化が同時進行しつつある日本における教員養成や教科教育学のこれからのあり方への示唆を導く。すなわち,教科教育学と教育社会学といった教育学内の学問的住み分けを解消することで,学力格差への対応を大学の教員養成課程の基本方針とする新しい教員養成のあり方を提起する。